著者の慎泰俊さんから献本頂いたため、遅ればせながら読書メモを書いた。

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

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 恥ずかしながら「一時保護所」についてあまり知らなかったので、とても勉強になった。一時保護所とは、「実家庭で暮らすことが最善ではない」と児童相談所に判断された子どもたちが、平均1ヶ月滞在する場所のこと。(その後、実家庭に戻れない場合、社会的養護や特別養子縁組を受けて、実親を離れ生活することになる。)

 本書は、一時保護所の厳しい規律や、そこに滞在する子どもたちの精神的な不安定さについて、ルポ形式で描かれている。また、一時保護所にも「良い保護所」と「そうでない保護所」があり、その違いについても詳細に記述されている。
 
 抑圧的な一時保護所については、「人間は教育と養育によって成長するという認識が欠けているような気がしてなりません。前者を担う組織の代表格は学校、後者のそれは家庭です。」と批判的に描かれている。
 一方で、「真夜中に電話で呼び出される」など児童相談所の職員の過酷な労働環境、子どもを取り巻く問題が児童相談所に一極集中し「ガラパゴス化」する現状についても言及し、行政レベルでの改革・民間人ができることについて提言している。
 
 個人的には、第3章の(5)の「増加する貧困と虐待」は、データ集としてもよくまとまっていて、参考になった。
 貧困率の各国比較、虐待による死亡数の推移、一時保護所の子どもの親の学歴などのデータだけでなく、「なぜ等可処分所得は平方根で割って計算するのか」「絶対的貧困と相対的貧困」といったコラムも有益だった。
 「アダム・スミス以来、多くの経済学者たちが、貧困とは単に生命を維持するための物質を買うことができないことを含むだけでなく、一般の人々であればできることができないことにある、と考えました」といった記述は貧困問題を語る上で重要だが、一般には知られていないと思う。
 
 その他印象に残ったのは、下記の記述。
 「親に養育の意思がないために児童養護施設に入所した子どもが、施設内で暴力事件と性加害を起こしてしまった、というものがありました。こういうケースにおいては、その子どもは一旦児童養護施設を離れて一時保護所に戻り、その次の処遇を考えることになります。」
 「次の方向性が見出せないまま一時保護したものの、保護所内でも問題を起こしてしまい、個室に隔離され、一年間閉じこもって生活しているという少年がいました。かといって私にできることはなく、無力感を抱くしかありませんでした。」
 
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 僕も親に養育能力がなかったため、12歳の時から親元を離れて生活をしてきた。だからインタビューを読んでいると当時を思い出し、とても苦しかった。