おっさんたちが「残業」を好む理由の一つは、「自分もそうやって仕事をしてきた」からだと思う。
「自分は長時間働くことで、仕事の能力をつけてきた」と思っているからこそ、他者にもそれを押し付けてしまう。

僕自身も起業してから2年ぐらいは、1日15時間働き、休みもなかった。だから「全社員、長時間必死で働くべきだ」と心のどこかで思っていた。
僕に限らず起業家の多くは「寝ずに働いたことで、今の自分がある」と思うだろうし、外資金融コンサルの多くも「バリュー出なければ長時間働くべし」と思うだろう。

でも今は、そういう自分の価値観を他者に押し付ける「幼さ」から脱皮できて、とても良かったと思う。

自分と同じ成長曲線を他者がたどるとは限らない。
自分と同じような価値観を他者が持っているとは限らない。
自分と同じような体力を他者が持っているとは限らない。

自分と他者は全く異なる存在だという認識なしには、会社も社会も適切に回すことができない。

僕が、そう思えるようになったのは去年ぐらいのことだった。
それまでも労働時間の管理はしていたけれども、今年からは電子タイムカードを導入するなど、幾つか仕組みを整えた。その結果、1日平均残業時間を30分程度まで抑えることができた。

僕自身も労働時間が減ったことで、仕事に必要な本を読んだり、友人たちに仕事の特定のテーマについて相談したり、または仕事とは直接関係のない文学や思想の本を読む時間も取れるようになった。

そういった仕事に一見関係が薄いことにも時間を使ったが、それらは確実に仕事にも活きた。
現に、巣鴨駅から徒歩15分/築40年のアパートから始まった会社は、5年間でアルバイトを含めると100名を超える規模になった。

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「20代のうちはもっと仕事をした方が力がつく」「もっとたくさん働きたい人もいる」
労働時間の規制の話になると、必ずこの手の反論が出てくる。

僕も前述したように20代後半のその時期は必死で働いたし、そのおかげでだいぶ力がついたとも思っている。

けれども普通の大企業であれば、たくさんの人が入社してくるのだから、単一的な価値観を押し付けてはいけない。
成長曲線も価値観も体力も、人はそれぞれ異なる。

仕事以外の時間について、仕事が大好きな人は仕事に関わる自己研鑽に使えばいいと思う。
でも一方、家族や恋人と過ごす人がいても良いと思う。家族や恋人と過ごしリラックスすることで、仕事のパフォーマンスが上がる人もいるかもしれない。

そして何より、電通の一連の出来事みればわかるように、「過労」は時に取り返しのつかない状況を生んでしまう。
だから過剰な残業を会社(上司含めて)が社員に強制してはいけない。

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人は鬱状態になると、正常な判断ができなくなってしまう。「こんな会社辞めてやる」ではなく「能力が低い自分はどこに行ってもダメなんだ」となってしまう。

実際に転職市場は、新卒ですぐに辞めた人には厳しい。
僕自身も新卒すぐに鬱になって会社に行かなくなったことがあった。
「新卒一年目で辞めたら、もうどこにも雇ってもらえなくなる」と悩み、住んでいたマンションの7階から飛び降りようと何度もした。

だから、「会社が合わなければ、辞めればいい」なんて論理も、成り立たないと僕は思っている。

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僕を知っている人はわかると思うけど、僕は人とのコミュニケーションがあまり得意ではない。
だからできることは数少ないけれども、来年は残業削減だけでなく、社員のキャリアアップ制度を作ったり、360度評価の仕組みを入れたりなど、できることを丁寧にきちんとやっていきたい。

社員一人一人がもっと働きやすい環境を作る、それが2017年の僕の経営者としての誓いだ。