今年は激動の年だった。そのうちの一つが、NPO法人でやってきた事業のほとんどを、昨年作った株式会社に移管したことだった。今後弊社(キズキ・グループと呼んでいる)は、きちんと利益の出る事業を株式会社で行い、利益は出ないが社会変革に必要な事業をNPO法人で行っていく。
 その体制変更に伴い、弊社が今後どのような道を目指していくのかを文書にまとめ社内に告知することが、年末の大きな仕事の一つだった。
 完成したものを、備忘録的に僕のブログにも転載しておこうと思う。
 
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 キズキは「何度でもやり直せる社会をつくる」ことをミッションとしていて、このミッションを一刻も早く達成したいと考えています。(このミッションは、ウェブサイトでも書いているように安田自身の幼少期の頃の経験やバングラデシュでの経験に基づいています)
 そして、一刻も早いミッション達成のためには最もインパクトのある方法で事業を遂行する必要があります。
 
 一般的に社会的な事業では、「寄付」「行政委託」「ビジネス」の3つの事業遂行の形態があります。
 
 ・「寄付」について
 たとえば貧困世帯の支援等、利益獲得が困難な事業を遂行する上では有益な手法となりえますが、そのためには継続的に寄付を募る能力の獲得が必要となります。現状キズキには継続的に寄付を集める能力が備わっていないため、NPO法人の中で今後力を入れていく事業になります。

 ・「行政委託」について
 行政は市場の失敗を補完する上で歴史的に重要な役割を果たしていきましたが、教育・福祉分野の委託事業については、現状では幾つかの課題があると感じています。これらの課題解決を行政に訴えかけながら、今後は徐々に行政委託事業に力を入れていきます。
1:質の向上に向けた切磋琢磨よりも、行政が決めた枠組みに沿ってきちんと事業を行うことが最も重視されがちです。
2:現状、多くの委託事業では、「行政が委託業者を選ぶ」というやり方が行われています。そのため、困難を抱える方々が「どの業者によるサービスを選ぶか」という選択権を持っていないケースがあります。キズキの事業で言えば、普通の生徒たちは塾を選べるのに、貧困などの若者は行政が指定した業者のところに通わざるをえないという状況が生まれているのです。
3:教育・福祉の行政委託事業では、間接費の設定が認められていない場合が多々あるなど、事業の継続性を考えると委託を受けるのが難しいことがあります。
 
 上記の裏返しの表現になりますが、「質の向上に向けた切磋琢磨を行うこと」「利用者が最も良いサービスを選択できること」「持続可能な組織であること」が、社会課題解決において重要なことだとキズキは考えています。また、少子高齢化の中で国の社会保障費が増大する中で、「できるだけコストをかけず」社会課題を解決できる仕組みも重要だと考えています。
 これらを満たしているものが、「ビジネス」だと考えています。ビジネスであれば、他者との競争の中で質の向上を生まれ、顧客は質が高いサービスを選びます。また、適切な対価を頂くことで組織として継続していきます。もちろん行政の補助が出るような事業も多々ありますが、基本的には行政がコストを払う必要は無くなります。
 そのため、キズキでは、一定レベルの所得層の方々を対象とした事業は、きちんとビジネスとして対価を頂くべきだと考え、ビジネスを基軸に事業を展開していきます。

 もちろん現実には、この「売上」と「社会的価値」が必ずしもリンクしないビジネスが沢山あります。いくら売り上げを上げても、一部の人が幸福になり多数の人が不幸になってしまうようなビジネスもあります。
 キズキは、このような事態を回避するため、「より多くの困難を抱える人に質の高いサービスを届ける」ことと、「売上・利益といったビジネスの結果指標を直結させる」ことに徹底的にこだわります。
 そのため、例えば学習教室事業では、生徒一人一人の半年以上の通塾継続率を事業にとって一つの重要な指標として定義し、継続率向上に向けて徹底的にサービスを改善しています。なぜなら、一度学校をドロップアウトし、他の塾にも通えなかった若者たちが、キズキで半年以上通い続けられたならば、彼らの社会復帰にとって重要な出来事となるからです。一方で月謝制のため、顧客に継続してもらうことが、売り上げを継続的にあげる上では重要です。
 また、生徒数の拡大こそが、「より多くの困難を抱える人に質の高いサービスを届ける」ことにつながると考え、多くの生徒に対し授業を提供できる講師をより高く評価する設計としています。
 今後他の事業に参入する場合も、その選択においては、ミッション達成とビジネスの成果達成が直結されることが担保されることを不可欠の条件とすることをここに宣言します。