黒子のバスケ事件の被告人意見陳述が僕のTwitter上で話題だったので、読んでみた。
本当に胸が締め付けられて苦しすぎる文章だった。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinodahiroyuki/20140315-00033576/
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinodahiroyuki/20140315-00033579/

その犯人の陳述書の中で、僕が印象に残ったフレーズを抜粋する。

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(引用開始)

「いわゆる「負け組」に属する人間が、成功者に対する妬みを動機に犯罪に走るという類型の事件は、ひょっとしたら今後の日本で頻発するかもしれません。グローバル経済体制の拡大により、一億総中流の意識が崩壊し、国民の間の格差が明確化して久しい昨今です。」

「正直に申し上げますと、今の日本の刑事司法には自分を罰する方法はないと思います。自分は現在は留置所で寝泊まりしております。他の被留置者と仲良く話をしたりもできました。自分が人とまともに長く会話をしたのは本当に久しぶりです。」

「また、刑務所での服役も全く恐くありません。少なくとも娑婆よりは、人生の格差を自分に突きつけて来る存在に出会うことはないでしょう。いじめがあっても刑務官さんたちは、自分の両親や小学校の担任教師よりはきちんと対応して下さるでしょう。」

「そもそもまともに就職したことがなく、逮捕前の仕事も日雇い派遣でした。自分には失くして惜しい社会的地位がありません。また、家族もいません。父親は既に他界しています。母親は自営業をしていましたが、自分の事件のせいで店を畳まざるを得なくなりました。それについて申し訳ないという気持ちは全くありません。むしろ素晴らしい復讐を果たせたと思い満足しています。自分と母親との関係はこのようなものです。他の親族とも疎遠で全くつき合いはありません。もちろん友人は全くいません。」

「被害者遺族が自分たちの苦しみや悲しみや怒りをメディア上で訴えているのをよく見かけますが、自分に言わせればその遺族たちは自分よりずっと幸せです。遺族たちは不幸にも愛する人を失ってしまいましたが、失う前には愛する人が存在したではありませんか。自分には愛する人を失うことすらできません。」

「そして死にたいのですから、命も惜しくないし、死刑は大歓迎です。自分のように人間関係も社会的地位もなく、失うものが何もないから罪を犯すことに心理的抵抗のない人間を「無敵の人」とネットスラングでは表現します。これからの日本社会はこの「無敵の人」が増えこそすれ減りはしません。」

「自分がいかに自己愛が強くて、怠け者で、他者への甘えと依存心に満ち、逆境に立ち向かう心の強さが皆無で、被害者意識だけは強く、規範意識が欠如したどうしようもない人間であることは、自分自身が誰よりもよく分かっています。それでも自分は両親や生育環境に責任転嫁して、心の平衡を保つ精神的勝利法をやめる気はありませんし、やめられません。」

(引用終わり)

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同様の経験をした若者たちの支援をずっとやってきているが、ここまで自分の心理を的確に分析し、表現している、知性的な文章を見たことがなかった。
知性はあるから、最低限の倫理はあるから、(秋葉原事件の時のような)人を殺すような犯罪はできない。
ただ、この社会で自分が生きてきた痕跡を残したいと思うから、(何かをするまでは)自殺はできない。

だからこういう犯罪になったのだと思う。

そして、知性があるということは、自分の状況がよく見えて、かつ自分への期待値も高くなってしまう。
さらに「進学校出身」ということからも、自分への期待値の高さがわかる。

「幸福」は他者との比較から生まれないが、「不幸」は他者との比較から生まれてしまう。
周りと比較して、どうして自分だけがこうなってしまったのか、苦しむ。

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僕と彼との違いは、僕が同性愛者ではなかったことと、恋人がいたことぐらいだった。
僕の場合は小学生の頃に父が外に子どもを作って帰ってこなくなり、母も家に帰ってこない日が増え、12歳の時に寮に入ることにした。
けれども寮でも散々いじめに合って、そのあとは祖父母の家や継母の家を転々としながら生活していた。
勉強も運動もできなかったから、学校にも行かなくなっていった。

どこにも居場所はなかった。

けれども、服装に気を遣ったら恋人ができたり、猛勉強したら大学に行けたり、大学に言ったら友人ができたり、就職したら上手くいかなかったけど起業したら上手く行ったり、そういう中で少しずつ自己肯定感を回復させていった。

僕が自分の事業を通じて支援差し上げている若者たちも、僕らが関わる中で少しずつ回復していけるといいなと思っている。なぜなら、「そういう機会や他者に出会えなかった」というだけの紙一重が、年齢を重ねるごとに大きくなり、絶望は深まってしまうからだ。

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中退にしろ、非正規雇用にしろ、家庭の崩壊にしろ、あらゆる「ドロップアウト」の最大の苦しみは、「物語」を紡げなくなってしまうことだ。人は「物語」によって人生を意味づける。
僕だって、くそみたいな10代までの人生に「意味」を与えたいから、今見たいな仕事をしているだけだ。

だから、彼が自分自身の生育環境や挫折に対して、「意味」や「物語」を付与できなかったこと、そのことを悲しく思う。