先日、母校の学生新聞にインタビューして頂きました。
就活生に向けた記事です。

偉そうに喋りすぎていて恐縮なのですが、転載致します。
http://subsite.icu.ac.jp/org/wg/index.html

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11月に入り、学内にもスーツ姿の学生が散見されるようになってきた。いたるところで、就職の話をしている学生も見られ、就職活動が徐々に始まってきていることを窺わせる。読者の中にも、すでに就職活動を始めている人もいるだろう。しかし、一般企業への就職だけが、社会に関わる生き方という訳ではない。今回は少し視点を変えて、ICU卒業後、総合商社を退職し「NPO法人キズキ」を立ち上げた安田祐輔さん(ID:08 6卒)にお話を伺った。
(※インタビューは再構成済)
【くまむし。】

――NPO法人キズキとは、どのような活動を行なっているのですか?
簡単に言うと、ドロップアウトしてしまった若者たちにやり直しのチャンスを提供するために活動しています。ニート・引きこもり、不登校・高校中退、貧困や職場のストレス……様々な形で人生につまずいてしまった若者たちがもう一度社会と関わるために必要な支援を行う。それがキズキの主な活動です。
具体的には「基礎学力支援事業」「大学受験支援事業」「再学事業」という3つの事業を行なっており、特に「大学受験支援事業」が現在、キズキの主幹事業です。これは大学受験を通してニート、高校中退、不登校などといった立場の人々に、やり直しの機会を提供するものです。また、「基礎学力支援事業」では中学や高校での勉強についていけない若者に学業支援活動を行うことで、ドロップアウトを予防します。そして「再学事業」では、ニート・引きこもりといった状況にある人々に、「学び」の過程を通して、就職するために必要となるスキルと自信を身につけて社会復帰できるよう、支援していきます。これら3つの事業を通して、社会の中でつまずいてしまった人々が何度でもやり直せる社会をつくる。それが僕の目指すことであり、NPO法人キズキの目的です。

――どうして安田さんは総合商社をやめて、NPOを立ち上げようと思ったのですか?
NPOで食べていくことを決めたのは、社会において本当に価値のある仕事をしたいと思ったから、そして社会の中でつまずいてしまい自己肯定感を持てない若者を支援したい、と考えるようになったからです。ここに至るまでの経緯は、僕の生い立ちも含めて話してもいいですか? 少し長くなりますが、重要なところなので。

もともと僕自身社会からドロップアウトした経験を持っています。子供の頃は家庭環境に恵まれなくて、小学校卒業後は親戚の家や寮などを転々として暮らしていました。なぜ生きているのか、自分が何をしたいのかということが本当に分からなくなって暴走族に入っていた時期もありました。それが変わったのは18歳の時、テレビでイラク戦争やアフガン空爆を見てからです。当時は総理大臣の名前も知らないような僕でしたが、その時、苦しんでいる人たちのために、「何かできることはないか」と真剣に悩み、大学を受験することを決めました。2年間の猛勉強の末、20歳の時にICUに入学しましたが、大学生活は本当に楽しかった。ずっと、自分を肯定することができなかった僕にとって、大学での生活は本当に素晴らしい時間でした。様々なことを経験しましたし、未来も開けました。そこが僕の原点なんです。

――ICUではどのような大学生活を送られたのですか?
本当にいろんなことをしましたよ。日本・イスラエル・パレスチナ学生会議の代表も務めましたし、休学して、ルーマニアで働いたこともあります。現場を知りたいとの思いから、大学時代後半から卒業後にかけて、バングラデシュの娼婦街にこもってセックスワーカーの映画をとったりもしました。だけど、そうやって、現場に入って、現地の複雑な状況を目の当たりにすると、今度は自分がどうしたらいいのか、わからなくなってしまった。現地の人は優秀で問題を解決するための能力を持っています。でも、そこに現地語を話せなくてお金を持っている人間がどんどん介入していく。そんな状況を目の当たりにして、「現地の人にできなくて自分にできることは何か」、と考えた時に、僕は何も見つけることができなかった。その鬱屈とした気持ちを引きずったまま、僕は日本に帰り、就職活動に取り組んだんです。

――帰国してからの就職活動は大変だったのではないですか?
嫌味に聞こえるかもしれませんが、就職活動は楽でした。面接なんかは、想定される質問を100個ぐらい考えて、その答えも全部用意していきました。終わったあとは、面接官の反応からその回答で良かったかどうか、再検討し、全部ノートに書きこんでいました。オリジナルの想定問題集みたいなものです。その甲斐あって、外資コンサル、マスコミ、商社などから内定を頂きました。その中で僕が選んだのは商社です。理由としては時給換算して一番いいところに行きたいっていうのがひとつ、もうひとつはやっぱりどこかで、僕は途上国に関わり続けるのかな、という思いが自分の中にあったからでしょうね。
商社に入ってからは、アフリカで石油の投資に関わりました。でも、僕にはそれが社会を良くするとはどうしても思えなかった。むしろ、石油のせいで貧富の格差が拡大している。だけど、そこで「これが社会をどう良くするのか」と問いかけても答えてくれる人は誰もいない。入社から半年たって、気がついたら僕は会社に行けなくなっていました……。
会社を辞めた直後は家にこもって、ひたすらゲームの日々でした(笑)。しばらくすると流石にうんざりして、転職しようとしたけど、今度は納得出来る条件の職がない。これはもう起業するしかないか……。そう思ったのが2010年の春です。自分は社会のどんな問題を解決したいのか。そういうことを真剣に考えるようになったのもちょうどこの頃でした。

先ほど言ったように、僕は途上国で紛争や貧困の問題にずっと関わってきました。また、日本に帰ってきてからも、NPOの活動や、ホームレスと一般市民との対話集会を主催して、日本の貧困問題について、働きながら勉強を続けていました。その中でずっと感じていたのが、途上国にある「希望」が日本には無いということです。途上国は今、発展期です。そこに住む人々は、確かに貧しいのですが1年後は今より良くなるという「希望」を持っています。一方で日本には「希望」がない。物質的には豊かなのですが、社会全体に閉塞感が漂っていて、一度社会から外れてしまうと、そこから這い上がれないような風潮があります。まずはこの日本に、再び「希望のある社会」を創ることができないか。僕はそう考えるようになりました。学生時代も学生団体で助成金をとっていたし、マザーハウスという会社で1年間働いていた経験もある。じゃあベンチャー系のNPOでもやろうかな、と。それから1年ぐらい経ちましたが、最近はようやく食べていけるようになってきました。

NPOでの仕事は、本当にいろんなことをやっているけれど、一番やりがいがあるのはやっぱり塾事業です。一度、社会からドロップアウトした人が受験を通じてやり直す。その経験を通して、社会とのつながりを取り戻す。まだ合格者は出ていないけども(注:2012年1月現在は合格者も出ています!)、事業のモデルも徐々に固まってきて、塾に来てくれている人がイキイキとしはじめているのを感じます。彼らにとっては、キズキが唯一の居場所なんですね。キズキがなくなったら彼らはまた居場所を失ってしまう。これはすごい責任があることだと思うし、やりがいも感じています。

――これから就職活動を行う学生に、何かアドバイスはありますか?
まず、具体的なアドバイスをさせてもらうと、就活本に書いてあることをそのまま言う人は絶対受かりませんね。自分の体験を引き寄せて、自分の言葉で語る。これが、できないとダメ。一番大事な点です。
あと、就職活動については、やりたいことを探すのもいいけど、どう生きたいかについても考えて欲しい。そのために、逆にこれだけは絶対にやりたくない事は何か真剣に考えてみるのも大事だと思います。やりたい事は具体的に「何々したい」というものが多いけど、やりたくない事っていうのは生き方に関わってくる場合が多いので、突き詰めると自分がどう生きたいかが見えてくることがあります。

例えば僕の場合は、会社員は無理でした。革靴は履きたくないし、なるべく私服でいたい。馬鹿な上司と働くとか冗談じゃない。自分がこの人いいな、スゲーなって思う人としか働きたくない。起きる時間も適当がいい。そしたら、起業しか残りませんでした(笑)。
それに、例えやりたい事に向かっていても、その過程はやりたくないことがいっぱいある。やりたいことに向かっていると頭ではわかっていても、その過程がつまらないと辛くなってしまうこともある。だから最初からやりたい事ばかり、見つめすぎないほうがいいと思います。
自分は苦労したから、みんなには自分に合った仕事を見つけて欲しい。会社に入ってから苦労しないで欲しい。僕も、自分が本当は大企業に合わないことは分かっていました。ベンチャーが向いているのも分かっていたんです。だけど周りの雑音に惑わされてしまった。僕は、やっぱり自己肯定感がなかなか持てなかったから、優秀であると言われることで認められたかったのかもしれません。でも、それでどう生きたいかということを見失ってしまった。だから、みんなはとにかくどう生きたいかを考えてみてください。

あ、あと最後に、就職のための力をつけたいなら、NPO法人キズキでインターンしましょう(笑)。すごく楽しいし、実力もつくし、社会問題を解決できる! 就職にも絶対に役に立ちますよ。興味があれば、ぜひ当団体のHPをご覧ください。お待ちしています。