空港からプノンペンの中心部に向かうトゥクトゥクのドライバーは、かなり英語がうまかった。
ホテルに着いた後もビールをおごって、彼とカンボジア事情について話を聞いていたのだが、ひと段落するとカンボジアではお決まりのあの台詞が出た。
"do you want a lady massage? do you want to BunBun?"
ちなみに、ブンブンとはカンボジア語で性行為を意味する。
 
正直なところ、カンボジアの女性はあまり僕の好みではない。しかも、一回50ドルとのこと。
僕が断ると、何かを勘違いしたのかドライバーは言った。
「よく日本人で、13歳の子とやりたいとか言う奴がいるけど、あれは違法だからな。そういう要求をしてくる奴は本当にむかつく。」
 
昔は一回5ドル程度で少女とやれることで有名だったカンボジアも、今はかなり法律が厳しくなったということだった。
少女売春で有名だった某S村もだいぶ廃れたらしい。
正義感を振りかざすつもりはないが、いいことだと僕は思った。
 
僕はカンボジアの女の子とのBunBunにあまり関心が沸かなかったので、「英語が使えるカンボジア人の女の子と話ができるとこはない?」と聞いた。
「それなら」、ということで西洋人がたむろするバーに連れて行かれた。キャバクラみたいなものである。
 
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中に入ると、何人かの西洋人がいた。
そして、彼らを相手にビリヤードをしたり、お酒を飲んだりしている女性たちが、10人程度いた。
客がお酒を頼めば、彼女たちにお金が入る。女の子を外に連れ出す時は客が店側に5ドル支払うが、女の子の方にもかなりの拒否権がある。
そんな仕組みを、僕はぼんやりと聞いていた。
 
欧米の中年男性ばかりが客のこの店に日本人の若者が入ってきたということで、注目を浴びてしまったらしく人が集まってきた。
「日本人か?」「肌が白くて羨ましい。」「その髪の色はどうやって染めたの?」
なまりの強い英語で、質問攻めにされた。
 
なぜかよく分からないけれども、その後、僕は彼女たちとすごく仲良くなった。
投機の対象になった農村に居場所を失い首都プノンペンに出てきた女性、幼い頃マレーシアに渡りメイドとして働き一人で生きてきた女性、様々な人々がいた。
でも、仲良くなるまでは、彼女たちの背負うモノに何も気づかなかった。
何も語ってくれなかったから。
 
僕はカンボジアに滞在していた一週間、彼女たちと毎晩クラブに通い、観光に付き合ってもらったりしていた。
彼女たちの喜びと悲しみに時折触れて、 人々を翻弄するのか見えない何かについてよく考えていた。
でも、答えは出なかった。
 
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まだ、この経験を整理できていなくて、うまく書くことができない。
でも、今日こんなことを書いたのは、このまま行くと流されてしまいそうだったから。
僕がなぜここにいるのか、見失うわけにはいかないから。
深夜の赤坂のキャバクラ帰りのタクシーの中で、ずっと考えていた。
 
けれども、今商社で働くことをネガティブに捉えているわけではない。
自分の関心の世界を閉ざしてしまうことは、悲しいことだから。
今は、 この社会や世界がどう動いているのか知るための期間だから。
それでたくさん給料がもらえるのだから、有難いと思わなきゃいけない。