バングラデシュの首都ダッカからバスで6時間のタンガイル村を訪れることになったのは、「タヒルさん」とダッカ大学付属の日本語学校で出会ったことが始まりだった。「バングラデシュの田舎に行きたい」と僕が言うと、三日後に彼の故郷を案内してくれることになったのだ。
 
昼過ぎにタンガイルに着くと、親戚を挙げての歓迎を受け、タヒルさんのお母さんとお姉さんは、食べきれないほどのご馳走を振舞ってくれた。
息子の帰省を泣いて喜び、彼の友人である僕たちの訪問を大歓迎してくれる、彼のご両親や親戚の方々を見て、少しだけ羨ましくなった。
 
ただその後に待ち受けていたのは、村中に散らばる彼の親戚たちへの挨拶回りであり、それが終わった頃にはすっかり夜が更けていたのだけれども。
 
 
 
タンガイルに限らず、バングラデシュにいるときは毎晩何度も停電を体験した。
停電になればファンが止まり、熱風と暗闇を同時に数十分も体験することになる。
 
バングラデシュに生きる人々にとって、停電なんて当たり前のことだから、彼らはむしろ暗闇を楽しむ。
タンガイルの昼間の雲ひとつない空も、それに照らされた草木も美しかったけど、星々に照らされた夜の闇も魅力的だと僕は感じた。
 
 
考えてみれば、僕が過した場所、三島町や長野市、カンボジアやイスラエル・パレスチナからは、とてもきれいな星が見えた。
タンガイルの夜空をみていると、こことそれらの場所は繋がっていて、そしてそれは東京にも繋がっているんだなと思った。
そう考えると、不思議な気持ちになった。
 
 
「停電も悪くないですね」
一緒に旅をしていた後輩K氏は僕に言った。
 
 
 
 
あと少ししたら、僕は再びその場所にいる。
 
そんな風にして、ずっと繋がっていられたらと願う。