ルーマニアの空はいつもどんよりとしていた。
もちろん晴れた日もあったのだけれど、でもなぜかいつも空が重いように感じた。
 
家から研究所までの行き帰りしていたことは、帰国までの日数の計算だった。
深夜閉じた瞼の中に浮かんでいたのは、日暮里や武蔵境の慣れ親しんでいた風景だったり東京にいる愛する人や仲間たちだったりした。
 
 
 
ずっと海外経験が欲しいと思ってて、「チャンス」とばかりに飛びついた今回の研究所勤務。
蓋を開けてみれば、それ自体には何の意味もない経験だった。
 
ある人が昔よく使っていた言葉に「見る前に飛べ」というのがあり、ここ二年ぐらいはそれを自分の中の標語としてきた。
だから研究所のホームページに英語がなかったり、事前のメールでのやり取りの際にちゃんと情報をもらえなかった以上分かっていたはずなのに、それでも「もしかしたら」と期待し、はるばるルーマニアまで来てしまった。
 
今回のルーマニア滞在が自分にとって意味をなさないことなど、滞在数日で気づいていた。
でも逃げないことを「強さ」と勘違いしていた私は、ただただ時間を消費し、親しい人をはけ口にして、その苛立ちから逃れようとしていた。
それこそが「弱さ」だったなんて、気づいたころには遅かった。
 
 
 
 
  
その暗い空の向こうに、いつも薔薇色の未来をいつも夢想していたのだけれど、どうやらそんなものは待っていないみたいだ。
たとえ同じ空の下でつながっていたのだとしても。